九月の空 高橋三千綱

こんばんは。けんちゃんです。今回は高橋三千綱「九月の空」を読みました。剣道部に所属する勇が、高校生ならではの悩みに直面し、旅をしたり、剣道に熱中することでなんとか解決していこうとする。その姿を見て、一貫した男らしい意志を持ちたいと思わせてくれた。誠実で、筋の通ったおじいちゃんを思い出した。自分がどんな風に行動したらいいか、悩んだ時に読むのがおすすめの本である。

青春の無頼:社会的な規範や大人の価値観に縛られることを嫌い、自分自身の純粋な理想や情熱に基づいて、自由奔放に生きようとする若者特有の態度や生き方

「趣味でなかったら一体、なんだ。一生、剣道だけをやればいいと言うのか。俺は、今だからこそ、現在の自分だからこそ、全ての途中にいるからこそ、剣道をやっているのではないか。…剣道だけが全てじゃないかもしれない…違うはずだ。だが、今はこいつに熱中すればいい。とことん燃焼すればいい。そうさ、俺は、好きなだけなんだ。…剣道を、思い出にされたくないんです。自分だったら、剣道を辞めた時点で、剣道のことは全て忘れてしまうんだろうという予感が、勇にはあった。何かはわからない、不明瞭だ、だが、そのときには、別のものに熱中し、溺れ切っているのだろうと信じた。僕は今剣道をやっているんだし、打ち込んでいるんです。毎日そればっかしです。満足してます。それ以上に夢中です。でも、遊びとも違うんです。いまはそれしかやっていないんです。…色目を使って試合に出る奴らなんか、惨敗するに決まっている…趣味は気分転換とは違うんだ。あの人たちのは、心を和ませるための剣道なんだ、単なる、夢なんだ。…趣味にだって、命をかけることだってありうる…それ以外にないんだから」ぼくの思いがここに全て書き込まれていると感じた。何かの本で深く共感した。p76ぼくも自分をとても厳しい環境に放り込みたいと思った。当時の彼女に「自分を眠る時間をなくすほどに追い込みたいんだけどどうしたらいいかな」と相談してみたら、「いつも難しことばかり聞くよね」と呆れられてしまい、次の日にはフラれてしまった。ただ、ぼくは自分の持っているエネルギーを何か一つのことだけにぶちまけてみたいとずっと思っていた。それができずにいつもモンモンとしていた。高校生の時は、勉強を人並み程度に頑張っていたが、一生のために必要だとは微塵も思わなかった。勉強ができる人がかっこいいとも思わなかった。燃焼するものはなかった。ただアニメや漫画が大好きで、寝る間も惜しんで見続けていた。いま思えば、とても熱中できていた。ただそれも一生続けるものではないと思った。いくらアニメを見たところで、自分の技術は上がらないし、お金をもらえるわけでもないからだ。好きなだけという理由だけでは、ぼくは全力を注ぎ続けることはできなかった。勇と一緒に剣道部に通っていたなら、真っ先に「お前は試合に出るな、思い出にされたくない」と言われてしまうだろう。勇は一生懸命にやっていない奴が嫌いなんだ。それだけ、剣道が好きということなんだろう。ぼくは読書が好きだが、適当に読んでいる人がいても、嫌悪感は感じないと思う。あまり読書が好きでないのだろうか、心配になってしまう。たんなる夢なんだろうか。しかし、この「単なる夢」という部分は共感ができない。夢が一番大事だと思っている。好きなことを続けていくことで、自分の夢が叶うのが一番良い過程だと、今、ぼくは思っている。ただ、ぼくも気分転換や心を和ますためにやっているのではないし、遊びではない。とにかく打ち込みたい、その的をいまは読書にしている。

ぼくはいま、途中という感覚はない。25歳になり、これまでに探し続けてきた、自分の好きなことは「読書」だと思っている。一生続けていきたい。気分転換や心を和ますもの、遊びではない。好きなことに溺れるほど熱中した先に、自分の夢「物書きで飯を食っていくこと」があればいいと思っている。これは趣味というのだろうか。勇はこれに似たものを勇気を振り絞って、趣味と言ったのだと思った。

「女の子に笑顔を向けられるのが、勇には俄かに恥ずかしく思えた。その原因の一つは、北海道から松山に一度葉書を出したためで、後になって女の子に手紙を書くなんてどうかしていると自分で自身の行為に照れてしまったものだ。」p101ぼくも旅先から女友達に手紙を出す。相手のことを思って、というよりも自分が送りたいと思うから送る。最初は本当に送っていいものか悩んだが、彼女が何回も「送り続けてね」と言ってくれたので送り続けることができている。ぼくは感じたことを全て、相手に言ってしまいたくなる。仲が良い友達だと、隠し事をしたくないため、なんでも話してしまう。だが、最近なんでもいうことが最適ではないし、相手は全部話したいと思っていないかもしれないと思った。話したくない話が存在するのだ。自分にはそれがないから、相手の状態を想像することが難しい。結局、自分に足りていないのは、想像力。彼女はいつまで彼氏を作らないのだろうか。「君との関係も普通になってしまったね」と言ってしまった。最初出会ってからすごい速さで親しくなったのだが、時間が経ち普通の付き合い年数で普通の仲の良さになってしまったと思った。

「勇は自分の軀に溜まっているエネルギーを、できるだけ早く使い切ってしまいたいと思っていた。…近頃頭の中に頻繁に登場するクラスメートの松山と裸でむかいあっている妄想も、吹き飛ぶの絵はないかと思っていた。それだけのために自転車旅行を計画したわけではないのだが、勇は自身で、エネルギーの高まりを抑えることができなくなることがよくあり、それには軀をとことん使い切る他ないのではないかと考えみたりしていたのだ。p182

「憂いを含んだ顔で湯の話を上の空で聞いていた松山の表情に気づいた。松山の作ってきた弁当をたらふく食べた後で、勇は人気のない自然動物園を、席に立って歩いていた。松山は寡黙になっていた、裸の木の植った丘を見上げて、勇は、それは自分がいった無遠慮な言葉のせいなのだと考えていた。いま思えば、二人で会う気が少しはあると思っていたのに、そんな気が微塵も感じられなかったことにも寂しさを感じていた。自分勝手な嫉妬だ。とにかく彼女に対して思いが重すぎるのだ。

「ひろ子はばかに弾んだ声でいった、勇はじっと博子を見つめていた、いhロコが同じ年の娘だとは、勇には信じられなかった。いろいろな悲しいものをこのこは胸の中にしまい込んでいるのだと思った。」p242個の無骨な少年が、同じ年の少女のことを考えて、優しい気持ちになっているのが、素敵だ。

じじむさくぐじぐじと

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