宮本輝

[私たちが好きだったこと]を読んだ

こんばんは。けんちゃんです。今回は宮本輝「私たちが好きだったこと」を読みました。

この本は四人の男女が登場し、その中の男の人の目線で物語が進んでいきます。トレンディードラマを見ているようでした。
人が困っていると助けてしまう四人です。

主人公が高倍率のマンションを当てます。
そして男の友人とシェアハウスをすることにします。その夜二人はバーに行きます。そこで、二人の女性と出逢います。酔った勢いで四人が同居することになるのです。
その生活の中で、愛し合ったり、疑いあったりします。

ぼくはこの本を読む時、大切な人との別れに悩んでいました。そしてその別れを時間と共に忘れていってしまうことが嫌でした。
そんな時、本の中の文章によって気持ちが楽になりました。助けられました。
自己啓発本ではなく、小説から学ぶことでより心の奥まで沁みました。

出会いと別れに悩んでいる人におすすめの本です。

感動した文章と自分が感じたこと

1「私はロバの言う通りかもしれないと思った。私たちの生きている世界は、刺激に満ち、騒音だらけで、不快な色や形が氾濫し、人は他人に優しくなく、心を機械的に操ろうとし、弱いものを捨てようとする、、、。繊細であればあるほど、人は、群衆と機械と情報の中で、一人ぼっちになっていくことだろう」宮本輝「私たちが好きだったこと」p78

スマホの世界は刺激的だし、水道局やガス会社などの世界は優しくなく、仕事ができないものは捨てられていく。ぼくはSNSをやっていない。他の人の煌びやかな世界を見ると劣等感に押しつぶされてしまいそうになるからだ。そして、自分の世界を見せびらかすのも好きじゃない。給湯器が壊れてしまい、お風呂に入れなくなったときに修理を頼んだら、ただいま繁忙期であり二週間後になりますと言われた。そして、中での修理も必要なため立ち会いも必要だと。だが平日の16時までしか対応できないと言われた。誰がその無理難題を解決できるのだ。風呂が入れないという状況を鑑みてくれることはない。お客さんがたくさんいるため人情なんて持ち合わせていたら仕事にならないのだろう。そのときに突き放されたような寂しさを感じた。ぼくは繊細な方ではないから人との関係であまり落ち込むことはないが、繊細な人はたまらないと思う。だから、自分一人で生きて行く力をつけるしかない。自分は死ぬまで一緒だから。自分一人で楽しむことができれば寂しさなんて感じることもない。友人との別れが辛い。だが、前よりも落ち込まなくてよくなってきた。会えなくてもお互いを思い合う時間があれば、それだけでいい。

2「ミネルバの梟は、時代の黄昏とともに飛び立つ」p93

ミネルバはギリシャ神話のアテナに相当する知恵の女神。梟は知恵の象徴である。この諺は知恵、哲学や深い理解は、事態が全て終わってからやってくるということの比喩である。ぼくは今月から新しい土地へ異動となった。すると今まで住んでいた土地にすごく興味が湧いてきた。異動が決まった日から、毎日その街のお店で外食するようになった。すると素敵な店主のいるお店がたくさんあった。初めから訪れていれば、もっと深い関係を築けたかもしれない。だが後の祭りだ。この諺の通り、大事なことは事態が終わってからじゃないと気づくことが難しいのかもしれない。もうすでに自分と同じ状態を経験した人に聞くことができれば、深い理解を教えてもらうことができ、今をもっと充実したモノにすることができるだろう。「他人の梟を自分の朝に飛ばしてもらう」失敗談を聞き、なぜそうしたのかを聞くことで知恵を身につけることができる。

3「私は、自分たちの関係を寂しく感じ、冬の軽井沢に来たことを後悔した。曜子の言葉が、正しいとすれば、私たち四人は、他人が困っているのを黙って見捨てることのできないお人好しなのだが、それは、安心していられる硬い絆が、自分の生活に一本もないからだとも言えるような気がした。不安もないが、安心もない。そんなつながりにも、私は寂しさを感じた」p135

ぼくはお人好しではない。他人の失敗で笑ってしまう。困っている人がいてもどうしたも助けてあげなくてはいけない状態にならないと助けない。外国人の人はなぜか助けてあげたく感じる。自分が持っている安心することのできる固い絆はなんだろう。自分が生きるということだけだ。一番好きな関係はバイト先でできた三人組だ。彼らとは安心はない不安だ。だがとても楽しい。ごく稀に安心感を感じることもできる。パチンコやスロットのような快感を感じている。いつも面白いんじゃつまらない。つまらない時もあるから、とてつもなく楽しい瞬間もやってくる。

4「みんないなくなるかもしらない、、。そう思うと、私はふいにうろたえてしまった。大切なものが、根こそぎ、私のもとから消えていくことに怯えたのだった」p236

ぼくも同じ状態だ。あと一月は友人とたくさん会うことができるが、四月になると離れ離れになってしまう。もう会えない。寂しいが楽しみでもある。また一人の時間に集中することができる。そんな貴重な時間も人生において少ないだろう。結婚して娘を授かるという最終的な夢はあるが、その前に一人で達成しておかないといけないことがある。ただ、その夢を叶えるための努力の方向が合っているのか不安になる。このままやっていっても人に見てもらえる時は来るのだろうか。友人と会えなくなることは寂しい。でも時間はすぎていく。それぞれに花を咲かせるために。別れがあまり寂しく感じなくなったのは、この一年で自分が一番変化したことだと思う。

5「啓蟄って知ってる?見た目は冬だけど、土の中では、いろんな虫や生き物が、蠢き始める時のこと。私、啓蟄って言葉を聞くと、何だか感動するの。死んだふりをして冬を超えて、カレンダーもないのに、誰に教えられたわけでもないのに、ありとあらゆる生き物が春のために動き出す」p275

ぼくは啓蟄という言葉を初めて聞いた。この本でしか出会うことがない言葉なのではないか。しらな言葉に出会うことができるのも本の大きな魅力の一つだ。虫が動き始めるのも時間のおかげだ。時間というのは偉大だ。ぼくはまだ冬眠したことがないと思っている。いつでも真夏でいたい。自分の人間の優しさみたいなものが小さい頃と比べてなくなってしまっている。合理的というか利己的になってしまった。このままでは自分を愛してくれる人は現れないと思う。自分を客観的に見て魅了句を感じるような人になりたい。他人に迷惑をかけないようにする。人のために何かする。

6「愛子がどこかからかふいにあらわれそうな気がして、何度も周りに目をやったが、そのようなことは起こらなかった」p308

ぼくも好きな人ができてから、街を歩いているときに、そのひとを探してしまう。同じような髪型の人がいるとドキッとしてしまう。もう何も考えずに歩けることはなくなってしまった。だから、寝起きでそのまま外に出てしまった時はその人に会わないように願って道を進んでいる。この気持ちもいつかはなくなってしまうのだろうか。

7「人間は孤独を恐れてはいけない。愛する人間との別れに立ち向かっていかなくてはならない。残酷だがどうしようもない愛の終わりに耐えて、主人公は生きていく。その決意、その潔さに感動したのだと思う。孤独との戦い。それでも生き続けろ。人生は童話ではない」p333

孤独を恐れてはいけないか、本当はずっと好きな人たちと一緒にいたい。だがそれはできない。自分自身以外は永遠なんて存在しなそうだ。同じ人が相手でも、同じ気持ちはずっとは続かない。どんどんと変化していく。とても残酷だ。でもしょうがない。考えてもしょうがない。どうしても欲しければ動くだけ。そうしないということは孤独を受け入れることができるということだ。楽しい思い出はもうこちらのものだ。宝箱に入れてもう出さない。ぼくだけのものだ。過去だけが宝箱に入れることができる。永遠なんてものは今ここにあるだけだよ。(B‘z 美しき世界)

人として優しくなって困っている人を助けてあげたい。
男女の関係は永遠のものはない。
お金によって引き裂かれてしまうことがある。
自分が人との別れで悩んでいるときに助けてくれた本になった。
人との別れが辛くて耐えられない人にぜひ読んで欲しい本だった。

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